臨床の概要
アミノ酸代謝異常症、有機酸代謝異常症、糖代謝異常症、ライソゾーム病、ペルオキシソーム病、ミトコンドリア病などを代表とする先天代謝異常症全般の診断及び治療を行っています。
迅速な診断や治療を通して患者さんによりよい生活を提供できるように、新生児マススクリーニング事業に積極的に取り組んでいます。スクリーニング対象の先天代謝異常症に関しては、宮城県・仙台市の精査医療機関を担当しています。また、青森県と福島県のタンデムマス関連疾患の精査医療機関にもなっています。最近では、ライソゾーム病や副腎白質ジストロフィーも含めた拡大新生児マススクリーニングにも関わっています。
診断では酵素活性を測定するという生化学的な手法のみならず、遺伝子解析なども積極的に実施しています。また必要に応じて臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを実施しています。
治療面では従来の食餌療法や薬物療法に加えて、酵素補充療法や造血細胞移植など最新の治療を取り入れており、従来治療法が無いとされた先天代謝異常症の新しい治療法に取り組んでいます。
研究の概要
日々の臨床において患者さんやご家族と共有した課題を研究テーマにし、最先端の技術も取り入れながら、研究成果を患者さんに還元できるように努めています。代謝グループでは以下のような成果を挙げてきました。
- 非ケトーシス型高グリシン血症に関する研究
グリシン開裂酵素の機能低下が原因であることを証明し、原因遺伝子も同定しました。 - シトリン欠損症に関する研究
原因不明の新生児肝炎の病因を解明し、シトリン欠損症において新生児期から乳児期に起こりうる、シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)という疾患概念を確立しました。 - テトラヒドロビオプテリンによるフェニルケトン尿症の薬物治療
1999年に有効性を報告しました。また、同薬を使用して妊娠管理をした症例を報告しました。 - ガラクトース血症の新規病型であるGALM欠損症の同定
原因不明のガラクトース血症において新規病型であるGALM欠損症を同定し、ガラクトース血症IV型として報告しました。
最近では、次世代シーケンサーやマルチオミックスなどを用いた疾患の原因や病態の解明、フェニルケトン尿症における在宅自己管理機器の開発、新しい核酸医薬や遺伝子治療法の開発にも注力しています。
主な参加学会
日本小児科学会、日本先天代謝異常学会、日本人類遺伝学会、日本マス・スクリーニング学会、アメリカ人類遺伝学会、SSIEM (Society for the Study of Inborn Errors of Metabolism)