高次修練の学生の皆さんへ
 
小児病態学分野での高次修練では、小児医療・医学研究の実際を知る場を提供しています。

 4週間の実習期間中、大学病院小児科の他、宮城県立こども病院や県内外の総合病院小児科、市内の小児科クリニック、訪問診療所での実習ができます。また、小児科の研究室で、遺伝学的解析を中心とした研究を実習することもできます。
 大学病院では下記の診療グループのいずれかに所属します。主治医グループの最若手として患者さんの診療に参加し、主治医とともに考えることを基本としています。
 4週間という比較的長い期間、じっくりと患者さんと向き合い、小児科の全体カンファレンスにおいて、受け持ち患者さんの症例呈示を行ってもらいます。最新の文献を検索するなど、研修医と同様の考察を行うことにより、BSLでは経験することのできないレベルの臨床を、体験していただきたいと考えています。
 各人の希望により、県内の小児科クリニックや県内外の総合病院での実習も可能です。BSLでは回れない病院にも実習を受け入れてもらっています。
 将来、小児医療あるいは関連分野に従事することを希望されている学生の皆さんには、この機会を利用して、小児医療の実際を深く体験していただきたいと思います。もちろん、他の診療分野に進むことを考えている学生の皆さんにも、小児の診療技術を身に付ける期間として、活用してくれることを望みます。 まだ将来の進路を決めかねている学生の皆さんにおいては、小児医療の実際を体験し、将来の進路を考える機会として、高次修練に望んでいただければと思います。

病棟でお会いできることを楽しみにしています。
 
各グループにおける実習内容
 

【実習目標】
  • 小児がん、小児血液疾患についての診断~治療法の概要について学ぶ。
  • 主な抗がん剤の作用機序ならびに副作用を理解する。
  • 造血細胞移植の概念を理解する。
  • 小児がん治療による晩期合併症の発症危険因子について学ぶ。

【実習スケジュール】

−1週目−

 受け持ち症例を決め、毎日の回診後カルテ記載、アセスメントを行う。
  • 受け持ち以外の患者に関しておおよその治療方針を理解する。
  • 採血・画像検査結果等の評価をする。
  • 治療内容を理解し、効果判定を行なう。
  • 化学療法に伴う副作用を理解する。

−2週目−

  • フローサイトメトリーや免疫染色による診断法について学ぶ。
  • 骨髄塗抹標本の作成、ライトギムザ染色を行う。
  • 骨髄形態観察を行い、正常造血細胞の形態を理解する。

−3~4週目−

  • 小児がんについて、症状、経過、検査・治療方法、予後などについてまとめる。
  • 小児血液もしくは腫瘍性疾患についてBSL学生への講義を行うことで、自らも疾患についての知識を深める。
  • カンファレンスで症例を提示する。

< 指導医:笹原洋二・新妻秀剛・入江正寛・片山紗乙莉・鈴木資・中野智太 >
 
【腎グループ】

 病棟での実習に加えて、外来での実習からも多くのことを学んでもらえる4週間にしたいと思います。

1. 先天性腎尿路異常の診断
先天性水腎症をはじめとする腎尿路異常を、エコーなどの画像検査を用いて診断します。
2. 血尿・蛋白尿の評価と診断
学校検尿陽性例の精査や、尿異常・浮腫などを伴う症例の診察を通して、鑑別診断・治療選択を行います。
3. 腎生検・病理診断
腎生検の適応・検査方法・禁忌などについて学び、実際の病理像を観察し、臨床像と病理像の関連について学びます。
4. 慢性腎臓病・腎代替療法・急性血液浄化療法
小児における慢性腎臓病とそれに伴う合併症や、腎代替療法の選択における、成人との共通点・相違点について学びます。
5. 血圧・電解質異常の診断
こどもの血圧の測り方・正常値を学びます。また、電解質異常から想起される病態・疾患の鑑別を行います。

 
< 指導医:内田奈生 >
 


【内分泌グループ】

 外来診療が中心ですので、週毎ではなく、4週の実習の間に経験してほしい内容を記します。

1. 成長障害の評価と診断、治療
・成長曲線の記載、成長ホルモン分泌試験(負荷試験)見学
・成長ホルモン治療の演習
2. 思春期レベルの評価、思春期異常を来す疾患の理解、腹部エコーによる子宮卵巣の超音波検査
3. 1型糖尿病、2型糖尿病の診療の実際
4. 様々な先天性症候群、骨系統疾患患者の診察(例:Turner症候群、Noonan症候群、Charge症候群、Silver-Russel症候群、軟骨無形成症など)
5. 甲状腺疾患患者の診察、検査所見の解釈、甲状腺超音波検査、クレチン症患者のI131甲状腺シンチグラム(7、8月)

< 指導医:菅野潤子 >
 


【代謝グループ】

 代謝は全身の各臓器に関わる生体維持に重要なメカニズムです。教科書を読むだけではわかりにくい代謝のイメージや考え方を、実習を通じて一緒に学びましょう!


【実習目標】
  • 先天代謝異常症の考え方や特徴的な症状を学ぶ
  • 先天代謝異常症の診断や治療を経験する
  • 新生児マススクリーニング陽性者の対応を経験する
  • 遺伝学的検査について理解する
  • 最新の研究に触れる

< 指導医:和田陽一 >
 
【実習目標】
  • てんかんや発達障害、神経変性疾患など、小児神経疾患の幅広さを体験する
  • 代表的な小児神経疾患の症例を主治医の1人として経験する
  • 問診・診察・検査による診断過程と治療について学習する

【主な実習内容】
  • 病棟実習において、主治医の1人として入院患者の診療を行う
  • 外来見学において、発達障害の症例の特徴についてイメージをつかむ
  • 小児神経における基本的な診察法を学ぶ
  • 発達検査、MRI検査、脳波検査、核医学検査(SPECTやPET)を経験する
  • 症例カンファランスで担当症例のプレゼンテーションを行う

< 指導医:植松貢、植松有里佳、及川善嗣、堅田有宇 >
 
【実習目標】
  • 小児循環器領域の現場を体験し、臨床実習を行い基本的な診察を身につけることを目標とする。
  • 非侵襲的検査である心臓超音波検査の操作方法を学び、基本断面の描出方法をマスターする。
  • 心臓カテーテル検査について理解し、血行動態の評価方法を学ぶ。

【実習スケジュール】

−1〜2週目−

  • 小児循環器における基本的な診察法を学ぶ。
  • 心臓超音波検査について理解する。

−3~4週目−

  • 心臓超音波検査を実践する。
  • 指導医のもと心臓カテーテル検査に参加しカテーテル操作を経験する。

< 指導医:大田千晴、岩澤伸哉 >
 
【実習スケジュール】

−1週目−

 「新生児ケアと基本的診察法の習得」「黄疸の評価」「早産児と満期新生児の身体的特徴の違い」について学びます。


−2週目−

 NICUに入院する成育限界児や疾患新生児の集中治療に参加し、「胎児から新生児への生理的変化」「胎児付属器の評価」「呼吸 (RDS) と循環 (PDA) の病態生理の評価」について回診での討論に参加し、スタイリッシュにプレゼンテーションするための基本を学びます。


−3~4週目−

 指定教官の指導のもと「新生児集中治療の手技」を体験するとともに、代表的な新生児疾患についてBSLの学生を相手に簡単に講義してもらいます。


< 指導医:埴田卓志、秋山志津子、渡邊真平、小林昌枝、佐藤信一、越浪正太 >