第四代教授
多田啓也
(S52年就任〜
H5年退官)
多田啓也教授は、昭和29年(1954)東北大学医学部を卒業後、東北大学小児科へ入局し、第二代佐野保教授、次いで第三代荒川雅男教授に師事した。昭和46年(1971)2月請われて大阪市立大学小児科教授に栄転、次いで昭和52年(1977)8月、荒川教授の後任として仙台に戻り、以後16年3か月間、東北大学小児科学教室を主宰した。その間207名の教室員を指導し、研究、教育に全力を尽くした。平成5年(1993)10月退官。

特にライフワークである先天性代謝異常症の研究は他大学の追随を許さないところとなり、世界をリードする研究成果が次々と発表された。

高グリシン血症の研究は血液・髄液中のグリシンの著増を特徴とし、重篤な脳障害を呈する小児の難病であるが、先ず本症がグリシン開裂酵素の欠損に基づくことを初めて証明した。次いで本症の原因遺伝子を同定、単離し、DNAレベルの異常を証明した。本症の研究を通して、それまで生理的意義が不明であったグリシン開裂酵素がヒトおよび動物におけるグリシン代謝の主要経路であること、特に脳において神経伝達物質としてのグリシンの濃度調節にこの酵素が重要な役割を担っていることを明らかにした。

また、糖尿病lb型の病因がミクロソーム膜のグルコース-6-燐酸輸送機構の欠損であることを初めて証明した。これは細胞内小器官の膜輸送系の障害に基づく遺伝疾患として最初の例であり、遺伝病に新しい疾患カテゴリーを提示したものである。

[艮陵同窓会百二十年史 (1998) より引用]
戻る