診療の概要
東北大学病院総合周産期母子医療センターの新生児室は合計33床(NICU15床+GCU18床)で運営されています。新生児科医9名と後期研修医4名、助産師/看護師約60名で診療にあたり、臨床工学士、臨床心理士、理学療法士、医療社会福祉士及び保育士から積極的な支援を受けています。当センターは県内で最も産科診療が充実している施設であるため、母体合併症、妊娠合併症、胎児異常、成育限界児など率先して最重症患者の診療に当たっています。年間の入院患者数は約300名で、その内訳は超低出生体重児30名、極低出生体重児40名、人工呼吸管理60名、外科手術20名程度です。主に、成育限界児(妊娠24週未満、出生体重500g未満、年間約15名出生)、胎児発育遅延、双胎間輸血症候群、胎児水腫、染色体異常、骨系統疾患、心奇形や外科疾患などを診療しています。
後期研修の6ヶ月間では、新生児の蘇生、呼吸循環管理を含む全身管理、脳・心・腹部の超音波診断、保育器ケア・水平感染予防・母乳栄養についての基本的な知識を学ぶことができます。バイタルサイン、理学所見、検査値などから病態を考えて治療方針を立て、夕回診や各科総回診などでプレゼンテーションし、その正当性を確認するトレーニングを行います。希望者は2〜3ヶ月間の産科研修も可能です。月5〜6回の日当直を行って多彩な経験を積むとともに、心身のリフレッシュのため月4日の完全休日が保証されています。当施設は新生児専門医制度における基幹研修施設であり、小児科専門医を取得した後に引き続き3年間研修することによって新生児専門医の受験資格が得られます。
研究の概要
最も力を注いでいるのは診療と基礎研究の両者を結ぶ新たな研究分野を胎児生理学の中で開拓することであり、当研究室は周産期学のphysician-scientist (臨床にも基礎研究にも卓越した医師)を養成できる本邦では数少ない施設の一つです。われわれはヒツジ胎仔の慢性実験系を用いて早産児脳性麻痺の責任病変である脳白質傷害の実験動物モデルを世界に先駆けて開発し、その脳血流動態ならびに子宮内炎症との関連性を解析しました。さらに、子宮内炎症やびまん性絨毛膜羊膜ヘモジデローシスによる胎児肺傷害の動物実験モデルを開発し、その予防法や治療法の開発に取り組んでいます。また、近年では海外の研究機関と共同で未来の周産期医療を担う夢の治療法「人工子宮」システムの開発にも精力的に取り組んでいます。われわれはこうした研究成果を「育児書からNatureまで」幅広い分野に発信しています。
新生児科指導医養成事業(厚生労働省による地域医療介護総合確保事業)
本事業は平成26年度より開始されました。この専門プログラム(4年間)に参加することで、
1.新生児科指導医養成セミナー受講(年3回)
2.メディカル・コーチ・トレーニング・プログラム受講(6ヶ月間)
3.日本周産期新生児医学会の専門医取得
4.海外短期留学(西オーストラリア大学に毎年1ヶ月)
5.胎児生理学研究で学位取得
を経て短期集中的に新生児科指導医を目指すことができます。
主な参加学会
日本小児科学会日本産科婦人科学会日本周産期・新生児医学会日本新生児成育医学会日本小児神経学会日本小児循環器学会日本人類遺伝学会日本先天異常学会、日本新生児慢性肺疾患研究会、胎児新生児神経研究会、周産期循環管理研究会、Fetal and Neonatal Physiological Society、Asian Society of Pediatric Research、Perinatal Society of Australia and New Zealand
メンバー構成
●埴田 卓志 (講師、H10年卒、医学博士、日本小児科学会専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会新生児専門医・暫定指導医、日本新生児成育医学会代議員、認定メディカル・コーチ)
●秋山 志津子 (助教、H15年卒、医学博士、日本小児科学会専門医)
●渡邊 真平 (助教、H17年卒、医学博士、日本小児科学会専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会新生児専門医、認定メディカル・コーチ)
●小林 昌枝 (助手、H17年卒、日本小児科学会専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会新生児専門医、認定メディカル・コーチ)
●臼田 治夫 (海外留学中、西オーストラリア大学senior clinical lecturer、H19年卒、医学博士、日本小児科学会専門医、認定メディカル・コーチ)
●佐藤 信一 (助手、H20年卒、日本小児科学会専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会新生児専門医、認定メディカル・コーチ)
●越浪 正太 (助手、H23年卒、日本小児科学会専門医)
●池田 秀之 (海外留学中、西オーストラリア大学research fellow、H24年卒、日本小児科学会専門医、認定メディカル・コーチ)
●桜井 愛惠 (助手、H24年卒、日本小児科学会専門医、日本周産期・新生児医学会新生児専門医、認定メディカル・コーチ)
●萩野 有正 (医員、H27年卒、日本小児科学会専門医、認定メディカル・コーチ)
●萩原 基実 (医員、H28年卒)
●佐原 寛太郎 (医員、H30年卒)

●松田 直 (ヨナハ丘の上病院/東北大小児科非常勤講師、S62年卒、医学博士、日本小児科学会専門医・指導医、日本新生児成育医学会代議員、認定メディカル・コーチ)
●渡邉 達也 (宮城県立こども病院 新生児科、H8年卒、医学博士、日本小児科学会専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会専門医・指導医、日本新生児成育医学会代議員)
●内田 俊彦 (宮城県立こども病院 新生児科、H10年卒、医学博士、日本小児科学会専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会専門医・指導医)
●渡辺 哲 (山形県立中央病院 小児科・総合周産期母子医療センター、H10年卒、医学博士、日本小児科学会専門医・指導医、ICD専門医)
●加賀 麻衣子 (仙台赤十字病院 新生児科、H12年卒、医学博士、日本小児科学会専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会専門医、日本新生児成育医学会代議員)
●佐藤 智樹 (仙台赤十字病院 新生児科、H13年卒、日本小児科学会専門医・指導医)
●北西 龍太 (大崎市民病院 小児科、H14年卒、日本小児科学会専門医・指導医、認定メディカル・コーチ)
●三浦 雄一郎 (東北医科薬科大学 小児科、H14年卒、医学博士、日本小児科学会専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会専門医)
●小野寺 幸子 (仙台赤十字病院 新生児科、H17年卒、日本小児科学会専門医・指導医)
●小野 寿和 (仙台赤十字病院 新生児科、H21年卒、日本小児科学会専門医)
●桑名 翔大 (石巻赤十字病院 小児科、H22年卒、日本小児科学会専門医、認定メディカル・コーチ)
●阿部 雄紀 (仙台赤十字病院 新生児科、H25年卒、日本小児科学会専門医)
●目時 嵩也 (山形県立中央病院 小児科・総合周産期母子医療センター、H25年卒、日本小児科学会専門医)
●金丸 茉莉恵 (山形県立中央病院 小児科・総合周産期母子医療センター、H25年卒、日本小児科学会専門医)
●髙梨 愛佳 (宮城県立こども病院 新生児科、平成25年卒、日本小児科学会専門医)
●及川 剛 (神奈川県立こども医療センター 新生児科、H27年卒、日本小児科学会専門医、認定メディカル・コーチ)
●熊坂 衣織 (宮城県立こども病院 新生児科、H28年卒、日本小児科学会専門医、認定メディカル・コーチ)
●武蔵 尭志 (宮城県立こども病院 新生児科、H30年卒)
●矢内 敦 (神奈川県立こども医療センター 集中治療科、H30年卒)
入局してこられるかたに望むこと
新生児医療は小児科のなかで特殊な分野ではなく、気管支喘息や熱性けいれんの治療と同様に必修分野です。小児科医としてどのような新生児に対しても初期対応が出来るようになることが必要です。子育てのプロを目指す方でもそうでない方でも、生まれたばかりの小さな命に対する慈しみの気持ちを持つ若者は大歓迎です。